たとえばだ。
たとえば、私が教室の一番窓側の、そして最も前の席に座っていて、開いている窓から吹く風にカーテンがなびいているとする。
少し目の前で、くくられたカーテンが絶えず動いているわけだが、クラスの皆は授業に集中していてそんなことには興味がない。
私だけがカーテンの揺れる音を感じているこの状況。
次の瞬間、カーテンが風にあおられ、黒板の左端にかためられたチョークを床へと落とす。
まるでなんらかの意志を持っているかのように、それは何本ものチョークを床へと落とす。
しかし、クラスの皆も、そして授業をしている先生も、それに気付かない。
私だけが、チョークの落ちる理由を知っている。
あとになって、先生はチョークが床に散乱しているのを不思議に思い、こう言う。
「…? 日直、ちょっとこれ片付けときなさい。」
日直は言いつけどおりにチョークを所定の場所に戻し、席へ戻る。
私は黙ったままだ。
次の授業の時間、またもやカーテンは相も変わらずチョークを下へ叩き落す。
それに気付いているのは私だけ。
でも私は何もしない。チョークを片付けもしなければ、皆にチョークが落ちる訳を説明することもしない。
ただ、私だけが、チョークの落ちる理由を知っている。
あとになって、先生はチョークが床に散乱しているのを不思議に思い、こう言う。
「…? 日直、ちょっとこれ片付けときなさい。」
日直は言いつけどおりにチョークを所定の場所に戻し、席へ戻る。
私は黙ったままだ。
そんなことが何回も続き、目の前に行われている一連の行動をひどく客観視している自分に気付く。
今、先生の声が聞こえた。同じ言葉を何百回耳にしただろうか。
日直は言いつけどおりにチョークを所定の場所に戻し、席へ戻る。
私は黙ったままだ。
そう、黙ったまま。
2007年06月08日
この記事へのコメント
今までで一番好きかも。
Posted by にぴたろ at 2007年06月10日 17:47
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